分割調剤という手法が導入されている理由
医師の指示により調剤を分割して行う方法を分割調剤と言います。薬剤師の重要な業務の一つなので、正確に理解しておくことが求められます。単にシステムとして機械的に覚えておくだけでは十分ではなく、分割調剤というシステムが導入された理由についても理解しておくことが大切です。
分割調剤をすれば残薬を減らすことができる
日常的に薬剤を服用している人は少なくありません。持病を持っている人などは、決められた薬を決められた方法で服用を続けています。毎日同じことをするので一度に多くの薬を出すことがあります。その結果、処方された薬がすべて使用されることなく廃棄されてしまうことも珍しくありません。
残薬が大量に出てしまうことは大きな無駄になってしまいます。分割調剤を用いれば、一度に多くの薬を渡すことがなくなるので残薬を減らす効果があります。数回に分けて調剤すれば、前回分の薬が残っているかどうかの確認ができます。
残っている場合は、どのくらいの量が残っているのかを確認すれば渡す量を調整できます。この調整が残薬を減らす効果に繋がる仕組みになっています。
長期間の服用による不測の事態を防ぐことができる
同じ傷病に対して同じ薬を出すのであれば、一度にたくさん渡しておけば受け取りの手間が省けるので便利という訳にはいきません。たとえ同じ薬であっても、長い期間服用を続けたり一度に所定の量を超えて服用したりすれば、何かしらの問題が生じることがあります。
また服用期間中に別の傷病を患うことになれば、並行して別の薬剤を服用することもあります。最初の薬を調剤した際には、意識していなかった状況になってしまうので不測の事態を招く可能性があります。分割調剤を行えば患者さんと接する機会が増え、状況に応じて判断を変更することが可能になり、リスクを軽減することができます。
短期的な状況把握が臨機応変な対応を可能にする
長期間患者さんと顔を合わせないことは、不測の事態を招くことだけがリスクではありません。頻繁に顔を合わせていれば、薬の効き方などをはじめとして患者さんの状況をこまめに把握することができます。短期的に判断材料を入手できれば、より機動的な調剤が可能になります。
薬剤師が薬を渡した患者さんに次に出会うのは、基本的に渡した薬がなくなった時です。一度に多くの薬を渡してしまえば、次に会う機会がそれだけ先になるということです。患者さんの傷病を把握する機会が減り、状況に応じた判断をする機会も少なくなります。
この点においても、分割調剤が導入された理由に含まれていると言えます。