薬学教育6年制の目玉である実践的実習
薬学教育6年制がスタートすると同時に病院や薬局での長期実務実習がカリキュラムの中に組まれるようになりました。医療人としての技能や態度に関する実践的な教育実習の実情についてここでは詳しく紹介しています。
4年次の試験をパスしなければならない
6年生薬学教育では、これまでの基礎薬学中心の教育だけでなく、医療薬学に関する広範なカリキュラムが組まれ、さらに課題探求能力や問題解決能力のなど深いレベルでの知識教育などが行われより実践的になりました。医療人としての資質を醸造するための教育として特徴的なのが、4年次に実施される薬学教養試験と5年次の長期実務実習です。
教養試験は5年次に薬局や病院で実習を行う薬学生が一定の基準を上回る知識や技能、態度を備えているかを評価するシステムになります。これは全国の大学で統一基準に基づいて実施されています。この試験に合格した薬学生が病院や薬局などの医療現場において、薬剤師の指導・監督のもと実習を行うことができる仕組みです。
見学実習からより実践的なものへと変化
試験には客観試験と客観的臨床能力試験の2種があり、特に後者は病院や薬局での業務そのもので、ここで適性があるかどうかが問われます。教養試験は統一基準で行われているのでパスできなければ進級もできないため大きな関門です。
実際の長期実務実習は、5年次に大学での事前実習を1か月実施したのち、病院で2.5か月、薬局で2.5か月という具合に行われます。4年制時代の実習が1週間程度で見学実習だったことを考えれば雲泥の差です。
学生を育てると同時に受け入れた側もともに成長してほしいということから、同じ医療機関には1度に2名までの受け入れしか許されていません。実習がはじまったのは2010年度からで、処方箋の前に患者さんがいることを実感したり、多職種との連携を実感できるなど前向きな学生の意見も多いのが実情です。
前向きな反応とともに実情に合わせた改善も
受け入れる側からみても学生を受け入れてよかったという実習先はおよそ9割以上にのぼり概ね好意的な反応です。実習生を受け入れることで自己研さんになったという意見が最も多く、次いで未来の薬剤師育成に貢献できたという声も出ています。
また、受け入れることで現場の業務改善にもつながったり、モチベーションアップにつながるなどの効果も出ています。しかし、一部、学生のマナーなどに不満を抱いたり、逆に学生側は指導者からパワハラやセクハラを受けたという報告があるのも事実です。
いずれにせよ、まだまだ歴史の浅いものであり、反省点もあるものの全体としては順調なスタートを切っているというのが現状です。